看守と囚人の不毛な話

 





私には彼の事が全くと言っていい程理解できない。
彼は、(資料を見る限り、であるから多分という予想になるが)ここに居るような人ではないハズだ。
いや、来る理由は困らない程ある。
なんたって彼は世に名高い大泥棒であるから。
盗んだモノは数知れず。彼ならば夜空に瞬く星だろうと手に入れる、らしい。
そんな彼が何故だかやたらと簡単に捕まった。
報告書によると【温泉に入っている所を地元の憲兵が偶然見つけ、確保】とある。


「…………マヌケ過ぎですわ……」



とは、私の個人的感想。
ともあれ、そういった経緯で彼はこの
『入れば二度と世界を見れない』『世界の果て』の異妙を持つ脱獄不可能の監獄に収容されていて、
そして彼の全責任をここの副署長である私が請け負っている。
彼はもう生きてこの監獄から出られない(はず)
特A級以上の犯罪者は(因みに彼は世界で3人しかいないSS級)その拘束服から手錠、
牢屋に至るまで全てにおいて異常なまでに徹底している。(はず)
だから彼は壁と一体化したかのように全部で1080にも及ぶ大小様々な手錠と鎖で繋がれており、
その他言い出したらキリがない程の絶対拘束・監視との下、残りの人生を過ごす………。


…………はず。なのだが


「………なんで外れてますの……」


いとも簡単に外れていた。



「いやぁー寝返りうっとったら外れとってん」
「張ったおしますわよ」
「怖っ」


笑いながら怖いも何もないだろう。また頭痛の種が増えた。全部彼絡みのものばかりだ。


「…………あなた何でここに居ますの……」
「は?捕まったからやろ?」
「分かってます!茶化さないで下さいっ!本当は出来るんじゃありませんの!?」
「脱獄かー?えーんか、監守がンな事言うて」
「だって……!!」


「ま、もちょっと世話になるよって。よろしゅうに〜」
「…………逃がしませんわよ、絶対」



その後、まぁ色々あって彼の目的やら何やら知って、一緒に脱獄して、
私が世界で4人目のSS級認定者になるのは、もう少し先の話。



そして私は、
人生、何があるかは本当にわかりませんわ・・・



と、まるで他人事のように呟くのであった。