The Chinese Ghost

 


この世に蘇えった時、一番最初に目にしたモノは、
紅い満月を背にまっすぐ佇む、左右で違う色を放つ瞳を持つ少女だった。


「ちょっと佐野ぉーーっ!!あんたまた温泉なんか入ってんの!?」


たっぷりの天然のお湯に浸かりながら、ゆったりしている所に現れた乱入者。
青い髪に、左右違う色の瞳。左の太ももには呪を施した印が刻まれている。
我が主たる少女・森 あいである。


「なんやねんーえーやんけ。風呂ぐらいゆっくり入らせろや」


少し愚痴を零す。折角この世に蘇ったのだ(まぁ自分の意思ではなかったが)
自分の好きな事をやりたいのは当然だろう。


「っはぁ〜極楽極楽。生き返るわ〜」
「生き返ってんのよ、今まさに!」


的確なツッコミと言えるだろう。
自分は少女によって蘇らされた、死体に宿る魂だ。
体は特殊な防臭処置がされているので腐り落ちることはない。
契約の下、お互いの意識をある程度共有している関係だ。
まぁ、主従関係っちゅーやつか。
(普段俺のがツッコミやねんけどな・・・ま、えっか)


「それよりな、森」
「何〜?」
「死体でも、お前の下僕でもな、俺いちお男でな、今裸やで?」

俺はワリと平気やけど。

「だから?」
「・・・・・・・・・・・・・さよか・・・・・・」
「それより!仕事入ったの!!犬丸の奴、いくら私に守護者が出来たからって
 ちゃっと最近仕事させすぎだと思わない!?」
「いやーそんなもんちゃうか?えーやん別に」


言いながら立ち上がる。


「ちょっとーーーーーっ!!あがるんなら言いなさいよ!!」


瞬間顔を真っ赤にして回れ右をする。
・・・・女って、いやこの主様は分からない。


「準備できたらいつもの場所に集合!良いわねっ!?」


言うなり駆け出す。
お〜速い速い

さてさて、それでは早々に準備をしまして、主の下に行きますか。
望みの、この体の、何よりあの主の為に。


空を見上げると、暗い夜空に瞬く星。
そして輝く赤い月は、出会ったあの夜に似ていた。