読む前の注意点です

 

 

2人は20歳です

○植木くんは1DKに一人暮らし中(バス・トイレ付)

○私の中にある 「二人は結婚するまで結ばれていない」設定(そんなのあったのか)を無視。

○とある方に差し上げた物の修正verです。

○「それでも訪れる君との朝」と対になってる感じです。

 

 

 

 

 

 

 

   

 

 

「それでも迎える君の朝」

 

 

朝はいつもと同じ筈なのに迎える側の自分は昨日と違う気がするの。

 

 

 

 

 

 


「ん…」

 

 

少しだけ肌寒さを感じ温かみ求めて無意識に隣に手を延ばす。

あると思ったそれは、しかし布団に残ったものだった。

 

 

………あれ…?ここ、どこだっけ……あぁ」

 

 

自分の状況確認に数秒かかった。

…そっか…私、植木とーー…、

知らず笑みが浮かぶ

 

 

(何だろ…何か…くすぐったい)

 

 

昨夜の事を思い出して、顔が赤くなったのを自覚して改めて恥ずかしくなった。

ふと、身体を見れば、胸元やら二の腕に、赤い痕が点々とついている。

それが何なのかを分からない程に、自分は子供ではなくなった。

きっと首筋にもついているのだろう。

自分が彼に愛された証。

あの頃から、まさかこんな風になるとは思っていなかったけれど。

 

 

 

そういえば隣に寝ていた筈のこの部屋の主はどこにいったのだろう。

そんな事を今更ながらに思い当たって、周りをきょろきょろと見渡す。

そんな時、まるでタイミングを見計らっていたかのように扉が開いた。

 

 

「起きてたのか?」

 

 

そう言いながら近付いてくるのは件の人物であり、恋人と呼ぶ存在の植木耕助だ。

右手に持ったカップを無言で差し出す。

ありがとう、と受取り口をつける。

私好みに甘くされたココアはゆっくりと私の中に染み込んでいくようだった。

ベッドに腰かけた彼のカップの中には私が砂糖とミルクを大量に入れないと飲めないコーヒーが入っていた。

どこがおいしいんだろ…苦いだけじゃない?

 

 

……体」

「へ?」

「体…きつくないか?」

 

 

唐突にかけられた言葉は私への労りだった。

ほんの少し顔が赤く見えるのはきっと気のせいじゃない。何だか凄く可愛く思える。

彼の背中を見つめながら、くすりと笑いをもらす。

こっちを見ないのは恥ずかしいから?

 

 

背中には大小様々な傷があって。この中には私を守ってできた傷だってあるんだよね。

ほんの少しの罪悪感。

でも伝えたいのは謝罪じゃない。感謝とも違う。

上手く伝えられないから、その大きな背中に頭をよせる。

相手の驚きがダイレクトに伝わってきた。

 

 

「外れたね」

 

 

さっきの質問に対する答えじゃなく、わざと違う答えを告げる

 

 

…何が?」

「十年後の自分。中学の時作文で書いたんでしょ?18で結婚して〜、て」

 

 

あー、と納得した声が聞こえる。

 

 

「あれだと子供一人いる事になるか……でも書き直しくらった、アレ」

「そりゃそーでしょうね」

 

 

二人笑いあう。あの頃は二人ともまだまだ子供だった。

今が大人かはわからないけど甘やかな十代が終わりを告げたのは事実。

 

 

………ね」

 

 

少し甘えた声を出してみる。ーーーーーーこっち見て?
告げると素直に振り向いてくれる。彼の頭を引き寄せ瞼にキスをする。

 

 

「森」

 

 

呼ばれた途端デコピン一発。我ながら良い音

 

 

…いてぇ」

「森?何?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・あい」

「なぁに?耕助」

 

 

満面の笑み。

 

 

…キスしたい」

「や」

 

 

躊躇いがちに告げられた希望に速攻回答。

ーーあっ、落ち込みながらも、何でだよって顔してる。

耕助の表情を読むのだってこんなに容易くなった。

時間が絆の深さじゃないけど確かに築いてきたものがある。

 

 

「これ飲んで」

 

 

ずい、と差し出したのはココア。耕助がほんの少しすねた顔でそれを見る。

 

 

「私甘いのが好きなの。キスが苦いコーヒーの味なんて嫌よ」

 

 

面食らったような顔に意地悪く笑ってやる。


あの頃の私は釈迦力である意味潔癖だった。

側にいた少年が目に見えて傷付くのが嫌で、一人で立つんだって。

でも、自分のそんな行動の一つ一つにムリが生じて、相手にも自分にも負担になって、

結局私は未だに素直になれない時があるけれど。

・・・・・・ごめんね?いっぱい傷付けて、それでも守ってくれてたんだね。でもね多分もう大丈夫だから。

 

暖かく甘いものが、あの頃の私を包むかのように唇に触れた

 

 

 


あぁ、世界はなんて綺麗なんだろう、なんて思った