どこまでも澄みわたる素繁らしきただの日曜日

 

 




天気がいい春の日。二人で少し遠出をして公楽園にむかい、広場でお弁当を食べて、ゆっくりしていた。
折角だからとちょっと歩いた先にある植物館や動物とのふれあいコーナーをめぐった頃、だんだんと風がでてきた。
それじゃあ時間も時間だし、締めくくりとして夕日がとっても綺麗に見える(らしい)橋に行こうか、てな話になった。のだが…



「ちょ……風ーー!」
「森、何も叫ばんでも…」



思わず叫びたくなるほどに強くなった風。
髪が顔にあたって痛い。加えて今日の私は膝丈のスカートを着てきたので、面白いように風にあおられた。
必死に押さえるけれど、あんまり効果はない。


ふと少し前を行く少年の背を見る。
そういえばコイツはこーゆーの気にしてなかったなぁ。
BJとのバトルの最中に彼が言った言葉に私は随分憤慨したのだった。

いやいや、今は過去の事も失礼な少年の事もおいといて現実問題考えよう。
さて、どうしたものか。前を押さえれば後ろが、後ろを押さえれば前が、と手で押さえていては効果がない。ど、どうしたものか…



「ん」
「へ?」



突然差しだされたパーカーは先程まで彼がジャケットの中に着ていたものだった。
相手の言いたい事がイマイチわからず、意味をはかりかねていると



「だから、これを腰にまいたら、まだましだろ?」



はっきり言って驚いた。
あの彼がスカートを気にしてなかなか進めずにいた私を気使って彼なりの解決法を提示してくれた。
もちろん断る理由なんてないので、お礼を言って受けとる。
うん、これならなんとか大丈夫そうだ。

安心したからか、私は先程考えていた事を思い出し少し悪戯心が沸いた。



「ねー!」
「なんだー?」



私は何でだかよくはわからないけど、うれしいような、恥かしいような、わくわくするような、とにかく自然と笑顔が出る気持ちだったので、
さっき思いついた計画通りに悪戯を実行しようと思って、「早く来いよ」と先に進む彼にきいてみた。



「『気にすんなよーパンツの1つや2つくらい』じゃなかったのー?」



すぐには思いださなかったのか、何のこっちゃ、みたいな顔で私を見ていた彼は、
しかし思いあたる節があったらしく、少しだけ目を細めて口をへの字にし、前に向きなおってしまった。




「早くこいよ、おいてくぞ」
「はーーい!」



私がおいつくように、とゆっくり歩く彼に小走りで距離を縮めて。
めずらしく、照れた感じの彼の左手を後ろから拐うように握りしめて、さっきより笑顔が溢れる気持ちで並んで歩いた。
なるほど、これが『幸せな気持ち』なわけねーと思ったのは秘密で。




これ以上望まないよ 完全無敵のトレジャプレジャ





あとがき


未来系な二人を目指して見ました。BJとのバトルの時の一言ですね、植木のは。
お前が気にしなくても私は激しく気にします!(黙れ)