たくさんの言葉はいらないわ。

……あんたにそんなの望んでも意味がないような気がするし。

だからズドン!と心にくるやつ一言だけちょうだいよ。

 

 

「返事の前に尋かせて。アンタ今日がちゃんとなんの日か分かってたわね?」

 

 

我ながらプロポーズされた後に返す言葉がコレとわ………

こんなんじゃドラマや、まして映画なんて夢の夢の夢の、そのまたずーーーっと先の夢くらい遥か彼方だわ……

 

 

「うん。鈴子が大事だから覚えてろって」

「そっ…」(鈴子ちゃんさすが・・・)

 

 

う〜ん……そもそもコイツとの付き合いの始めって何だっけ……

戦いが終って、二人でのんびりしてた時にぽろっとそんな話になったんだたっけ?

まぁ記憶がなくなったりやらしてから、ちゃんと自分も気持ちが分かったんだけど……

私的にはコイツの面倒見てくれる心のひろーーーーい人が現れるまで代わりに見ててあげよう!くらいだったのになぁ。

そうだと思ってたのになぁ。違ったよ。ふぅ・・・・

 

 

「………あの、もしもし」

「あ、ごめん。何?」

 

 

意識遮断。短い間に随分振り返ったわ………

 

 

「俺…いちをプロポーズしたんでですね……返事ほしいんです、が……」

 

 

まぁ当然よね。てか、何で敬語?

でもコイツも今まで一緒にいたんだから私の気持ちくらい分かんないのかしら。

断ると思ってるの?確認?う〜ん。わっかんないわ……

あぁでもそっか……昔っからケジメをつけたがる奴だったっけ……

 

そわそわしている感じの相手を見つめる。

真剣な顔をして、私の返事を待っている姿に、心の中で嬉しさを噛みしめながら、

それは出さずに、ほんの少しだけの悪戯心を表に出す。

 

 

「う〜ん、どーしよーかなぁ」

「……………………え!?」

 

 

あは、焦ってる焦ってる!

 

 

「ん」

 

 

説明なしに左手を差し出す。モチロン意味は分かるわよね?

 

 

「一言だけよ」

「な、何が?」

「耕助らしい言葉で一言だけ。チャンス一回きりでプロポーズ」

「………………したじゃん」

「もう一回。さっきのはノーカウント」

「ひでぇ」

「手が疲れた〜やめよっか?」

「や、やります」

 

 

本当はどんな言葉でもいいの。最初の言葉で充分満足なの。私がもう一回聞きたいだけ。

思えばワガママになったもんだわ。

 

 

私の左手をとって、深呼吸を一つ。

どんな言葉でも私の答えは決まってるんだけど。

約束の指に誓いを。

意を決したように、再び告げられた言葉を、私は今までで一番最高の笑顔で答えた。