ある朝ポストを開けると、快晴の空を切り取ったかのように綺麗なブルーの封筒が一枚。

中には、今は神様をしている、優しそうな笑顔をした知り合いからの手紙。














「で、確認の為に聞くけど、行くわよね?」



朝の教室。まだ生徒が揃いきっていない部屋は、しかし、朝独特の騒がしさが広がっている。

机に突っ伏して眠っている植木を起こして封筒を見せながら尋ねた。



「…………なんだ、それ…?」

「なるほど。ポストは見てないわけね」



寝惚けたまま返された質問に、答えを得た森は封筒の中から中身を出して、広げて相手に見せる。



「ほら、これ。なんか犬丸がパーティー開いてくれるんだってさ」



へぇ、と漏らしながら森の手から招待状を抜き取り、文字を目で追う植木。
そうしながら、だんだんと頭を起こしているようだ。



「服とかもレンタルあるみたいだし。最初どうしようかと思ってたんだけどさ、中学生で
 正装とかって制服?とか思ったりしてたから安心したっていうか…………」

「正装じゃなきゃ駄目なのか?」

「まぁいちを神様なんだから、形式的には正装?の方がいいんじゃない?私は借りる気でいたけど」


折角の初めてのパーティーだ。

普段しないような格好。それこそ綺麗なドレスを着てみたいと思うのは女の子としては仕方ない欲だろう。


植木に説明しながら、帽子に手を置き微笑む青年(…だと思う)の姿を思い浮かべ、くすり、と笑う。

今まで黙って聞いていた(恐らく左から右に抜けていっていたのだろうが)植木は
急に変わった口調に、様子を伺うように不思議そうに見上げてくる。

その仕草が、なんだかとても可愛く感じて、より一層笑みがこぼれる。



「なんかさぁ普通さ、まさか神様が中学生同士のバトルで決まるなんて思わないだろうなーって」



自分だって、あの夏を体験しなければ信じないだろう。



「そっか……あれから一ヶ月なんだなぁ」

「なんか凄く前の事みたいに感じるけどね」

「だな」

「ずっと、会ってないみたいに感じるね」

「確かに。前は毎日ってくらい、顔あわせてたのにな」



仲間だと言うのも、もちろんあったが途中からは短い間とはいえ共同生活していたようなものだ。

家族以外の人間と何処かに泊まる経験なんて、小学生の時の修学旅行か、
中学に入ってすぐの宿泊研修(まぁコレは早く環境に慣れろ、という事なのだろうが)ぐらいだ。

実は一週間にも満たない期間だったとはいえ、ずっと一緒にいたのだ。


夏休みが終わり、始まった生活の中に溶けていくように戻っていくと、各個人の生活があって。
目の前にいる、眠たさ満開の少年以外は、ひょいひょい会える距離ではなくなってしまった。


そんなこんなで、今までそんなに使う事の無かった携帯の使用頻度は格段に上がった。

…………………………結果、父親に大目玉をくらったのだが。
当然と言えば当然だ。なんと言っても先月の倍ほどにもなっていたらしいのだから。



「早く会いたいな」

「佐野とか、鈴子とかヒデヨシとか会うの久しぶりだな……テンコは元気かな?」

「元気でしょ!絶対!!」

「ま、確かに……そっか、ごちそうとか出るかな…」

「出るんじゃない?すっごいの!」



今日は朝からなんてハイテンションなんだろう。

でも、だって仕方ない。

なんたって神様直々のお呼び出しに、中々会えない仲間達にも会える。

行かないわけには行かないだろう。

なんて嬉しい。楽しみすぎて明日にでも行ってしまいたいくらいだ。



「……なぁ森」

「ん?」

「晴れるといいな、その日」

「……?屋外なの?」



聞いても、植木は私の顔を見ながら嬉しそうに、ただ笑うだけだった。

なんだか分からないが、良い事があったらしい。



……まぁいいか。



心の底からキラキラと何かが輝くように。これがトキメキなのだろうか?

きっと私はわくわくしながら、この日まで指折り数えるのだろう。

そう思って、手の中に戻った招待状を見つめる。



あぁ、本当に、なんて綺麗な空。



確かに、その日が晴れればいいな、と思って、

私は笑った。






 

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バトルから一ヵ月後。

きっと個人の生活に戻りながら、でも体験した夏の記憶も新しく残っていて。
今が楽しくないわけじゃ決してないけれど、でも懐かしいよね、って感じです。

そんな時に、まぁいわば「お疲れ様でした〜会します(by新・旧神)」って招待状がきた。

いちをこの話を入れて全6話ぐらいかになるかと・・・・。5話かな。
森ちゃん目線でございます。
よければお付き合いくださいませ。