よろずサイト目指して第1段 『ペンギン革命 涼・ゆかり・綾』








「あの、二人ともご飯もうちょっとかかるから部屋で待っててもらっていいですよ?」


さっきから背中に感じる視線に返事をするように、ゆかりは顔だけ振り返って視線の主達に告げる。

キッチンでゆかりが料理をしているのを後ろからずっと見ていた涼と綾は、
一度お互いの顔を見合ってから、またさっきまでしていたようにゆかりの方を見つめる。


「や、ここで待ってるよ」


笑顔で返事をする涼の横でこくこく、と同意を表す綾。


「手伝ってやりたいけど俺達じゃ逆に邪魔になるしな」
「ほんとにな……」


あははーと笑いながら実際二人が手伝ってくれた時の事を思い出すと、
なんとなーく遠い所を見るような目になってしまう。


「えーと、じゃあもうちょっと待ってて下さいね」

「「はーい」」


ハモった元気な返事に満足したように笑顔でフライパンへと
視線を戻したゆかりを二人はまた飽きもせず見つめる。


あと少しだけの我慢。
けれど漂ってくるおいしそうな匂いに体は正直に反応して主張する。
小さな背中を見つめがら心に温かいものを感じて、
幼い頃に知る事がなかった母親への憧れはこんな形なのだろうか、と想いを馳せる。


きっともうすぐだ。とびっきりの笑顔で振り返って夕食の始まりを教えてくれる、その時まで。
もう少しだけ、この胸の温かさを抱いて、よく動き回る小さな背中を見つめていよう。





………数分後。想像していた通りの笑顔で振り返ったゆかりに対して、赤い顔をする二人。


その胸の温かさが母親への憧れとは違う感情だと気付くのは、まだもう少し先の話。








 


よろずサイト目指して第2段 『Fate/stay night アーチャー×凛』








漆黒の美しい髪が風になびく。
あと少しこの場所を守りきれば、愚かしいで、もきっと誰をもが願っていただろう日々が……この箱庭が閉じる。


「まぁ、ずっと続くなんて思ってなかったけどさ」


こんな日々に安らぎを感じていたのは本当だったから。


「どんなものにも終りは必要よね」


先に進む為に。

ふ、と笑い声。
分かりきった相手だから振り向きはしない。
何よ?


「いや?一応聞いておこうと思ってな。思い残しはないかね?」

「ぬるま湯に使って頭がふやけてるのかしら。あんたのマスターの名前を言ってみなさい、アーチャー」


くく、っと今度も楽しそうに背の後ろに立つ男は笑う。


「あぁすまない。くだらない事を聞いたな――――凛」


気付いた事が一つ。
この赤い男が呼ぶ、自分の名前の音がとても好きだ。


「そうよ。私は遠坂凛。冬木の管理者」


ここは私の領域。


「あ、ひとつだけ。あると言えばあるか」


今度は振り返って答える。さっきは否定したけれども。


「あなたの煎れるお茶をもう一度飲みたかった、かな」


笑顔で見上げて、その瞳を見つめる。


「私はサーヴァントで茶坊主ではないのだかな………いや、それは賛辞としてありがたく頂戴しよう」


バサリ


暗い背景に広がる鮮やかな赤い色。
背中を預けるのはただ一人。
赤い外套はこの場、この時マスター《私》と共に戦う為だけに。


「あと、…そうね数分だけ。最後まで付き合いなさいアーチャー」
「了解だマスター」


月に続く階段を誰かが上りきるまで。





 

 

 



よろずサイト目指して第3段 『カミヨミ 天馬×菊理』








桜が咲いた。
まるで桃色の靄の中にいるのではないかと思うぐらいの景色の中。


「今年も桜が咲いたよ、菊理」


そよそよと流れる優しい風に髪を遊ばせながら、一本の樹の前に立つ。
その大きな幹に触れながら、散ってしまった愛しい花の事を思う。

共に過ごした時間は短くて、だから今でもこの胸にそれを思い浮かべるのは少しだけ辛い。
もっと一緒にいてやれば良かったと、そんな事を考えても仕方がないのに。


幹から手を離して、自身の右の肩へと触れる。
ここにあるのは、唯一愛した妻が残してくれた赤い糸。

この身体全部、心に契った愛する者のものだと、いつか告げたように。

目を閉じて、彼女の笑顔を思い浮かべる。



『綺麗ですね、天馬さま』


耳元で聞こえた優しい声に、はっと目を見開く。

まるで空へと還るように、桃色の花びらが風によって運ばれる。
それを見つめてから一度地面に目を落として、また樹を見上げる。

きっとこの世とあの世の間に流れているという川の岸辺で菊理は待ってくれているのだろう。
いつか、そちらに行く事になった時やっぱり彼女は泣くだろうか。

けれど、まだだ。まだ自分は行けない。


――――――――もう少し、待っていてくれ


心でそう告げて桜に笑いかける。いつか菊理に向けていた笑顔で。



「あぁ綺麗だな、菊理」


彼女が、笑った気がした。





 

 






 

よろずサイト目指して第4段 『dear きさら×散葉』








囀る小鳥は一日の始まりを喜びの声で伝え

夕焼けの空は一日の疲れを労う様に温かい光で人々を包み

暗い夜空に浮かぶ星の光は新しい道を示すように輝く。

海は今日も穏やかに凪いで、緑の匂いを運ぶ風はいつだって優しい。



知らなかった。世界がこんなにも美しかった事。

彼女と、散葉と一緒にいられるこの幸せを。


「きーちゃん!」


差しだされた手にぎこちないながら笑顔で答えて、その手をとる。
買出しの帰り道。
話すのは些細な事。


「今日の仕事の時にねぇ」

「今日お饅頭屋のおじさんがおまけしてくれたん!」

「遊んどったちっちゃい子らが手振ってくれたんよ〜」

「隊長さんがおいしい紅茶の葉っぱ分けてくれてね、あとで一緒に飲もうな」


その一つ一つを頷きながら聞いて握り締めた手から伝われる熱に心地良さを感じる。


「きーちゃんは今日はどうやった?」

「今日は………そうだな、いつものように隊長が煩かったから…」


自分の話を笑顔で、時に驚きながらしっかりと聞いている散葉。


「今日はちょっとだけ回り道して帰ろうか」

「うん!」

さっきより少しだけ強く握られた手に、自分も彼女と同じように笑みを返す。


感じるもの全てが美しく思えて、彼女のいる景色に安らぎを覚えて。

いつもより長い帰り道が、それでももう少しだけ続くようにと、ゆっくりと歩いた。








 

 

 

 




よろずサイト目指して第5弾『るろうに剣心 弥彦×燕』






これは私だけの内緒の特権。





越後への出稽古前。
赤べこで夕飯を燕と二人で(途中由太郎が入ったりもしたのだが)済ませて、少しだけ散歩をする事になった。

夏が少し過ぎて今はもう夜もだいぶ涼しく過ごしやすくなった。
赤べこの制服である洋服のスカートが少しだけ風に遊ばれるのを慣れた手つきで押さえる。
川原沿いに吹く風は心地よく、頬を優しく一撫でして過ぎ去っていく。


「でも1ヶ月間越後で泊り込みの出稽古か………何だか久しぶりだね」
「まあな。薫に修行だって言われて由太郎とやたらめったら泊り込みの出稽古してたのが2年くらい前か?」
「そうだね。ふふ、何だか懐かしいな」


笑顔で当時の事を振り返りながら少しだけ寂しかった事を思い出す。
二人がいない間、自分は赤べこの仕事を一生懸命やっていたのだけれど、いつも聞こえる明るいやり取りを
耳にする事がなくって、その姿を見る事がなかったのが思っていた以上に寂しいものだった。

けれど、離れていて久々に顔を合わせると色んな事を実感できて嬉しいのも事実。


あぁ、身長伸びたな

またきっと凄く強くなったんだろうな

あ、新しい傷………


でも帰って来る度に一番実感するのは



やっぱり私はこの人が好きなんだな、と思うこと。



「どうしたよ?顔笑ってんぞ」
「え、そう?………そうかも」
「なんだそりゃ」


でも本人には内緒。
私はいつも待つ側だけれど。
ちゃーんとお行儀良く留守番した子供にはご褒美がつきものでしょう?


だから私は笑顔で送り出す。


「行ってらっしゃい!気をつけてね」


その言葉にいっぱいの気持ちを込めて。











 









よろずサイト目指して第6弾『うえきの法則 区長×秘書』









ヒールは高すぎず、けれども低すぎず。
スカートは膝上5cmぐらが望ましい。
歩く時は一本の線の上を意識して背筋は真っ直ぐと。
唇は自然と柔らかな笑みを刻めるように上品な色。もちろんグロスも忘れずに。
眼鏡は……………………まぁ個人の好みによりますが。


……他にも20項目ほどありますが以上。



私的『有能な秘書のススメ』






「いやぁしかしルチャ君がお父上の跡を継がれて区長に就任した時は不安もあったんだが
 ……いやいや君みたいな有能な秘書がいるんなら安心だねぇ」


年若い今度の区長に対して心の中では侮りながら口では真逆の事を並べあげる老人たち。
その嘘だらけの笑顔に対して、にっこりと艶やかに笑って見せる。
………まぁこちらも結局は彼等と同じなのだけれど。


「ありがとうございます。まだまだ不馴れで役員の方々には迷惑をおかけしてしまう
 場面も多々ございましょうが、ルチャ共々よろしくご指導下さい」


にっこり、にこにこ。

自然じゃない笑顔は中々に顔の筋肉を使うのね、と胸の内で溜め息をついた。



「あ〜お帰り秘書くん」
「………只今戻りました。―――――区長」


区長室の扉を開けて自分を落ち着かせる事0.5秒。
思わず脱力しそうになるのを自分自身で戒める。


「ルチャ区長。私があなたの代わりに出かけた時にお願いした件はなんでしたか?」
「んー、確か今僕の目の前にある今日提出厳守の書類の山に目を通して承認をする事だったね」
「はい、その通りです。―――――で、今区長の目の前に山積みになっているものは何でしょう?
 私には今日提出厳守の書類の山のように見えるのですが」
「おー大正解だよ!さっすが僕の優秀な秘書だね!!あっはははは〜!ごめんっムリだよコレこの量!」


そこは一切笑うところじゃない。
『じじぃ達と話すのはイヤだな〜きっと向こうも綺麗な、それこそ秘書くんのような女性と話したいに決まってるよ!』
と、のたまったのは彼で、そしてそれを了承した自分が彼に返した条件が先程述べられた件だったのに。


「―――――覚悟は良いですか、ルチャ区長?」


にじりと近づくと彼は、けれど両手をブンブン振りながら私にとってとんでもない事を告げる。


「や、いや〜やっぱさ!秘書くんいないと何からやっていいか分かんなくてさ!
 大丈夫!君がいれば処理も早いから!!自信あるよコレは!」


瞬間、動きを止めてしまう。
あぁ、私ってば。『有能な秘書』のはずなのに………………


「………では、今から10時間でやっていただきます。よろしいですね?」
「いや〜10時間てさすがにそれは厳し」
「よろしいですね?」
「………………うん。はい。」
「ではお席へどうぞ。一番期限の迫ってつものからお渡ししていくのでそれにサインを」


やる気のないような顔で椅子に腰掛ける彼に、やれやれとこっそりため息をついて。
書類を腕に抱えあげた所でまた自分を呼ぶ彼の声に答える。


「あ、秘書くん秘書くん」
「なんですか?ルチャ区長」


にっこり、にこにこ。
そう、心の底から本心である事を表すような笑顔で。





「今日の口紅、とっても秘書くんに似合ってて綺麗だよ」





あなたは、本当は知っているのでしょうか?
私が演じる有能な秘書の姿が、実はあなたの隣に居るためのものだと。


『有能な秘書のススメ』項目追加。


口紅は、ピンク系が好印象。











よろずサイト目指して第7弾『テニスの王子様 リョーマ×桜乃』







ぽーん、ばしゅっ!

ぽーん、ばしゅっ!

ぽーん、ばしゅっ!

ぽーん、……ぱこん


「あぁ!やっちゃった………せ、せっかく、続いてた、のに……」


はぁ、はぁ、と肩で息を切らせながら今まで続いていた壁打ちの練習。
なんとか50回は連続でも出来るようになってきた一人での打ちっぱなしは、けれどもその先がなかなか進まないでいた。

最初は酷くて見れたものではなかったフォームも、今ではだいぶ綺麗になったと思う。

自分だけでそう思うなら自信はなかったかもしれないが、あの帽子の少年が言うのだからきっと絶対大丈夫。

自分がテニスを始めるきっかけとなった少年―――――越前リョーマ。
その人に「フォームが綺麗に、良くなってきた」と言われた時は泣きそうなくらい嬉しかった。
部活の休憩中という貴重な時間に自分の練習を見てもらうのは正直気が引けたのだが

「そんな事気にせずに練習したら?こっちも勝手に見に来てんだし。ちゃんと休憩もしてるし」

とファンタを飲みながら「早く続きを始めろ」と云わんばかりに手をひらひらとされてしまった。


がんばらなければ。彼に見て貰うのはモチロン嬉しいけれど、それより何より自分が好きで上手くなりたいから。


「よし!もう一回!」
「がんばるのは良いけどさ」


意気込みを入れたその時に後ろから聞こえた声に、思わずビクリ!となってしまう。


「なにビビってんの」
「りょ、リョーマ君!?いつからそこに………」
「ついさっき、それよりさ」


つとつとつと。

桜乃のちょうど前の位置まで歩いてきたリョーマが、おもむろに自分がしていたトレードマークの帽子を桜乃の頭に被せた。


「へ?な、何?」
「顔真っ赤。こんな直射日光あたる所でそんなにやってたら日射病になるよ」
「あ………」


確かに少しだけ頭がぼーっとしているかもしれない。


「そーゆーのちゃんと自分で管理できなきゃあとあと辛いの自分だって覚えときなよ」
「うん。ありがとう、リョーマ君」
「べつに………ん」
「何?っひゃ冷たい!」


頬にあてられた缶の冷たさが、火照った肌に気持ちよかった。


「リョーマ君、これ」
「あげる。俺も飲んでる途中だし、休憩とクールダウンかねて少し冷やしとけば?」
「え、や、りょ、リョーマ君?」
「何?」
「いい、の?貰っちゃって………」
「だから良いって。早く飲めば?」


言葉は少なくて、少しぶっきらぼうな言い方だけれど。
その言葉の中にたくさん優しさが入っているのに気付いたのは最近の事。


「リョーマ君」
「………今度は何?」
「あのね、ありがとう」
「………………………………」


あれ黙っちゃった………おかしいな。ちゃんと笑顔で言えたと思ったんだけど。


「あんたってさ、結構油断できないよね………」


意味が分からずにハテナマークを頭の上に浮かべる私に、

「なんでもない」

と、夏の気温に暑くなったんだろう彼の耳は少しだけ赤かった。











よろずサイト目指して第8弾『TALES OF SYMPHONIA ロイド×コレット』









初めて会った時に思ったの。ロイドはまるでお日様みたい。






神子である自分は村の外には出られない。
そんな私の為に村の外の事をロイドとジーニアスはいつも話してくれたし、村の中でもたくさん遊んでくれた。



16歳の誕生日に受けた神託。世界を救う為の、その礎になる為の旅。



怖くは無かった。これは本当。

今まで私を育んでくれたいっぱいの温かいものを救えるのだから。

私はロイドがこれからも笑って生きていける世界になるのだから。



鳥の囀りは、私の歌声。

草原を吹き抜ける風は、私の吐息。

柔らかな木漏れ日は、私の両手。

花が咲いていたら、それはきっと私の笑顔。



そう思えばとても満ち足りた気分になれた。

心の中に浮かぶ思い出の中にはいつもロイドがいて、胸の真ん中があったかくなる。







ロイドはまるでお日様みたい。







私達はきっとみんな『一人ぼっち』だったの。

だから、あったかく照らしてくれるロイドの事をみんな好きないなるのは当たり前の事だったの。


追いかけてきてくれて、ありがとう。

大好きだよ。

いっぱい いっぱい 大好きだよ。


ねぇ、ロイド。
私『コレット』のままでロイドの傍にいてもいいのかな?
いつだって差し出してくれる手に触れられる所にいてもいいのかな?



「行こうぜコレット!」



うん、待ってロイド。

今度は私から腕を伸ばすから。

だからお願いねロイド

強く 強く、握り返してね――――――――――