ここは夜の住民の世界。世界が眠り月が皇女としてこの世を制する時間の、とある国のおはなし。

 

 



「Nightmar Town」

 

 

 



「あっおーーい!うーえきー」


大声で自分を呼ぶ人物の方を見る。まぁ誰かなんてのは声だけで見なくてもわかるんだけど。
不釣り合いな程の大きな三角帽をかぶり、右手には箒。白を基調にした服装は本来黒衣の服
であるべきなのだが,本人はあまり気にしていないらしい。魔女である彼女自身が気にしてい
ないのなら、あえて自分がツっこむ問題でもないだろう。

呼んだのに反応もなく、ただ見ているだけの自分に呆れたのか腹をたてたのか(多分前者)
相手がこちらに歩いてきた。
少女は魔女であり幼馴染み(のようなもの?)の森あい。まだ見習いだが、潜在能力はスゴイ(らしい)

「ったく、返事はともかく反応ぐらいは返しなさいよねー」
そう文句は言うものの、まっいつもの事か、と笑った。
「どうかしたのか?」
「ん?まぁ別に用があったわけじゃないんだけど、ね。あっちのアンタもかわらないんだなぁ、て」
「あっち?」


あっちとゆーのはどの方角の事だろう、と考えていると


「あ〜夢の話よ。あんたと一緒で、ぼーっとしてんだもん」

笑っちゃった、と嬉しそうに語る少女。
その笑顔は小さい頃から少しも変わらない。とパンプキン・ジャックの自分、植木耕助は思った。
目の前で楽しそうにしている少女を見て、ふと唐突に思いだした事があり、そのまま言葉にした。

「……そーいやオレも昨日、夢に森が出てきた、ような気がする」

そうだ。少女が夢で自分を見たのとは別に、自分自身も森の出てくる夢を見たのだ。

「なんか……手から木だしたり…あっ、そうだお前助けたり?してた」
「なんで疑問系なのよ。まっ助けてもらったのは事実ね。サンキュ」
「それ夢の中でも言われた。……ん?なんで助けた事知ってるんだ?」
「ん?そんな事言ったっけ?」

………言ったよな?助けてもらったのは事実とかって。むぅ
これは、またアレか
「魔女の秘密、か?」
魔女が護るべき世界の秘密の約束。
別に知りたいわけじゃない。ただ幼馴染みの、この少女との間に共有出来ないものが
あるのが少し寂しいだけで。

「別に秘密じゃないのよ、ただ知ってる人と知らない人がいるだけでさ。大した事じゃない気がするし」
「ふ〜ん…」
「まっそんな感じよ、っと時間きちゃった…ごめん」

時間てのは多分、勉強か何かだろう。久しぶりに会ったのに、話せたのはごく僅かだった。

「………………………」

「じゃあね植木!またねっ」

行ってしまう。自分に背を向けて走りだすのを、まだ見たくはなくて、だから――――

「今度どっかゆっくり行こう」

思ったより大きな声に振りかえった相手だけでなく自分も驚いた。でも言いたい事があったから。 「―――お前が暇な時……二人、で…さ」 最後の方はなんだか声がすぼんでしまった。情けないがめちゃくちゃ緊張したし。
目の前の魔女は少し驚いたまま、でもすぐに、はにかみながら笑顔を返してくれた。

「いいわね!場所ぐらい決めといてよ?……あっちでもアンタと
会えたって事はやっぱ繋がってるわ私たち!」
「………なんだそりゃ」
ヒントかな!私もよくわかってないし!とか叫びながら今度こそ走りだす背中を見送る。


さて、責任重大だ。がんばって彼女が喜びそうな場所を探そうか。
彼女が出したヒントは自分には分からないけど、繋がってるてのは
……うん、いい響きだ。
今度彼女と会う時までの宿題になりそうだ。
今日も夜が来る。ここはいつでもお祭り騒ぎ。
醒めない夢の、夢の夢。



ここはナイトメアタウン。夜を生きる人間が住まう場所。
興味があれば、お越しはどうか、夢からどうぞ。






あとがき

植森15巻表紙パラレル?的な話のつもり(おい)

森ちゃんは将来有望視されてる魔女の女の子。現在目下勉強中。
植木はパンプキン・ジャック(かぼちゃの悪魔一族)の設定。
幼馴染展開とかやっちゃいましたよ。馬鹿じゃない私………!痛い子!